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どれくらい眠りについていたのだろう。
―――誰かの呼ぶ声、がする。
「……起きたか!?」
ゆっくりと目を開けると、そこには雄々しい虎の姿が目の前にあり、俺の顔をのぞき込んでいた。
「……ラルフ?」
「やっと目を覚ましやがったか! エル!」
ラルフは人間と白虎のハーフで一種の獣人である。
体毛は白に覆われて、身長は190cmほどもある。
その屈強な身体と愉快な性格から、他人からの人望も厚い奴だった……はずだ。
―――少しずつ、思い出してきた。
俺はラルフと、それから……
あいつと…
3人で、旅をしていた?
「なぁ、ラルフ。俺はどうしてここにいるんだ? なんだか頭がぼうっとしていて、思い出せないんだ」
「そうか……。オメェはあの時、衝撃で頭を打って……それから一週間寝ていたからな。無理もないだろうな」
そういって俺はラルフから、ここまでの事の顛末を聞いた。
俺らの住むこのダンテ村では夜な夜な男たちが消えていくという奇怪な事件が起こっていた。
男たちはひとりでに村のそばの森に入っていき、そのまま何人も帰ってこなかったという。
そのずっと奥深くには魔女の住む森があるとされ、立ち入りが禁止されており、魔女の仕業ではないかと村人たちの間で囁かれるようになった。
この奇怪な事件を解決するべく、俺エルネストと、村一番の屈強な男として選ばれたラルフの2人に村から調査依頼がかかった。
そんな中、親父がその事件で居なくなったという、俺の親友でもあるサムも志願し、3人で調査に出かけた、というわけだ。
「……それで、俺らはその調査に失敗した、というわけか?」
そう言うと、ラルフは少し困った顔で耳を垂らした。
大の屈強な男がそれをやると、大型犬どころではない。
だって彼は虎なのだ。
でもそんな仕草も少し可愛く思えてしまう所が、俺の良くないところだと思う。
「……その、まぁそういうことだ! まぁオメェも俺も、力が足りなかったってことだ! ガハッハッハ」
ラルフは男らしく豪快な笑い声を上げ始めた。
俺はこいつのこういう所が好きだった。
いつも頼りがいがあり、豪快で、小さいことはどうでもよいと思えてしまう、そんなところが。
「ハッハ……」
ひとしきりラルフは笑うと、それでもバツが悪いのか、窓の方を向きながら自身の頬を指で掻きはじめた。
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