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「……お前を助けられなくて、すまない」
こんなにも、しおらしいラルフの態度は正直初めてだったかもしれない。
俺はしばらく呆けてしまった。
「いや、そんなことない!確かに……どうやら今、俺の身体はボロボロみたいだけど、また治ったら調査に挑めばいいじゃないか」
俺がそう言い返すと、それでもラルフは煮え切らない態度で、窓の方向を向いたまま、顔を合わせようとしない。
しばらくの沈黙が流れ、お互いに少し気まずい空気が流れだした。
「……なあ、水を少し飲みたいんだけど。少し手を貸してくれないか?」
沈黙を遮ろうと、俺が声をかけると、ラルフは無言のまま頷いた。
そして俺の右手を持ち、もう片方の手で俺の肩に手をまわした。
そして少し上体が起きたその時、
ドンッ!
「……ウッ!?」
急にラルフが手を引っ込めた。
そして俺の少しだけ浮き上がった身体はまたベッドに叩きつけられた。
「おい、ラルフ! 何すんッ……!」
そういって、なんとか首をラルフの方に向けると、ラルフは今までに見たことのない顔をしていた。
そのまま俺の方をじっと見つめて惚けたような顔をしている。
そしてハッと我に返ったようにラルフが視線を上にあげ、パクパクと口を動かし始めた。
「あ、すすすすまない。なんだか急にオメェに触ったのがいけない気がして……! あ、俺あの野郎のこと呼んでこなくちゃな。じゃ! また会おうぜ!」
そういってラルフは俺に有無を言わさないまま、急いで病室から出ていった。
なんなんだろうか、あいつの態度は。
でも、ちょっと今のラルフ、なんだか可愛かったな。
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