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友の中の真実
俺はサムを待つ間、この村で暮らしてきた今までのことを考えていた。
サムは俺の家の隣に住む同い年の幼馴染である。
身長は180cmで、誰もが羨むイケメン。
いつも人懐っこい笑顔を浮かべている。
性格は裏表がなく、真面目で、誰隔てなく優しい。
そして今では村で1,2を争う剣の腕前だ。
北に行けば、おばあさんの荷物をもってやり、
東に行けば、迷子になった子供の面倒を見て、
西に行けば、捨てられた子犬の新しい飼い主を探し、
南に行けば、……いじめられる同級生を助けてくれた。
そう、まぁなんというか、誰もが認める好青年なのである。
『家が隣で小さい頃から、ずっと遊んできた、から幼馴染』。
それだけの繋がりだけで、それだけの理由だけで、サムの親友としてポジションを作ってきた。
……それに比べて、俺は身長も少し小さく、顔はいまいち、どちらかと言えば引っ込み思案。
だからいつも優しく、周りに人が絶えない、そんなサムにずっと憧れを抱いていた。
そして、その憧れはいつか『好き』という感情に代わっていた。
サムがこちらを向いて笑顔を浮かべている。
それだけで俺の心はどうしようもなく、高鳴ってしまうのだった。
それは、いつだっただろうか。
俺は『普通じゃない』、ということに気づいた。
気づきたくなかった。
その瞬間から、俺は一生サムと親友であり続けることを決めたのだ。
この想いは決して伝えてはいけないものなのだ。
それから俺はサムと対等でいるため、より一層修練に励んできた。
せめてサムに負けないよう、幼い頃から扱ってきた弓の訓練だけは手を抜かなかった。
そして、いつしか俺は村一番の弓の使い手になっていた。
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