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「えー! だったじゃないよ。今もだよ!」
照れくさそうに依子は反対を向いてしまった。
こういうところが昔から俺の心をくすぐり判断を鈍らせるのである。
「私が好きだって言っても、ヒロ君は聞こえてないふりしてたもんね」
「聞こえてたけど、その、何て言うかいまいち信じられなくてさ」
「ひっどーい。結構、勇気だして告白してたのにぃ」
依子は可愛く不貞腐れてみせる。その素振りは中学の頃より数段可愛く、そして色っぽくも見えた。
バスが左回りでバスターミナルに入ってきた。依子が乗るバスだ。このバスを逃すと次は1時間後だ。田舎のバスは本当に本数が少なくて困る。
バスの中央が乗り口。
バスの前方が降り口。
依子は少し拗ねた感じだったが明るく言った。
「あー、バスが来ちゃった。また今度ゆっくり話そうね」
「そうだな。また今度な」
依子はバスに乗って後方の席に座り俺に手を振った。俺も手を振った。
バスの前方からは乗客が次々と降りてきていた。このバスターミナルは一応この町の中心地にある。その為、ここで降りる乗客は多い。そして、その中に制服姿のさくらを俺は見つけた。
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