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「へぇ、慣れてるんだ。こういうの」
顔を覗き込みながらさくらは俺をからかってきた。その表情が可愛くて目をそらす俺。
「慣れるとかそういうんじゃないだろ」
「そう? 私は緊張するなぁ」
本当は俺の方が緊張しているのだろうが、こんな風に言われてしまうともうどうすればいいのか分からなかった。
休日の午前中だからか乗客は少なく、乗ってくる人がいても年寄りばかりだ。終点はS市の中心地にはなっているが、地元の人がS市に行くことはあまりなく、殆どの人が山手のところでバスを降りる。バスの道のりは長く俺とさくらは思い出話に花を咲かせた。
山手に近付いたところのスーパー前のバス停で乗客を降ろす為にバスが止まった。ふと窓の外を見るとスーパーの前で依子を見つけた。ああ、そういえば家はこの辺だったな。依子はベビーカーの子連れの主婦っぽい人と談笑していた。
さくらは依子に気づいてないようだったし、俺もあえて教える必要もないとスルーした。
一昨日に話したばかりでまた見かけるなんて奇遇だ。まぁ、それを言えば今の状況の方が摩訶不思議ではあるのだが。
さくらは俺が中学の頃に好きだったことを知っているはずだ。
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