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初恋
俺達はバスターミナルに9時で約束していた。
バスターミナルに着くとさくらは既に長椅子に座ってスマートホンを見ながら待っていた。当然といえば当然だがさくらは一人で待っていた。
「お、おはよう」
もしかしたら俺の顔は赤かったかもしれない。なにせ休日に待ち合わせをして二人で出かけるなんてことは中学時代まで遡っても初めてのことだ。さくらは屈託のない笑顔で俺に挨拶をしてくれた。
「おはよう」
制服以外のさくらを初めて見た。一見スカートに見えるゆったりしたズボンに薄手の長袖。袖は少し折っている。肩にかけたトートバックの持ち手の片方が肩から落ちている。それでいてピンと伸びた背筋は相変わらずだ。周りには誰もいなかったがなんだかさくらを独り占めしているような嬉しさがあった。
時間通りにバスが来た。俺とさくらはバスに乗り、やや後方の席に並んで座った。
バスの座席は二人掛けのサイズではあるがさほど広くはなく、並んで座るとそれ相応の距離になる。この近さは想像しておらず心拍数が上がりそうだったが懸命に平静を装った。するとさくらが少し顔を赤らめて言った。
「なんか照れくさいね」
「そ、そうか?」
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