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「勿論だ。お前は今後国を背負う。そして、アレクシスとは違う視点でものを見る。あれは少し頭でっかちだからね。お前の力は必要だ」
ふと、ジョシュアの瞳が真面目になる。飲まれるような瞳の色に、ヴィンセントは妙な緊張に唾を飲み込んだ。
「私がいつまでもいると思ってはいけない。ヴィン、お前が支えていくんだ。この国はまだ発展する。ようやく始まったばかりだとも言える。励みなさい」
「……分かりました」
この人の、こんな顔はきっと仕事では見られない。だからこそ真剣に聞かなければならない。
ヴィンセントはしばしジョシュアの雰囲気に呑まれ、状況が抜けていた。その耳に、元気な赤ん坊の泣き声が聞こえるまで。
「え!」
「あぁ、生まれたみたいだね。支度もあるから、もう少し待っていなさい。準備ができたら呼びに来るさ」
「そんな悠長な!」
「ヴィンセント、女性にはどんな時でも身支度というものがある。あの声を聞くに、赤ん坊は無事に生まれた。どっしりと構えなさい」
早く会ってアネットに声をかけたいし、子供の顔も見たい。けれどジョシュアはこう言っている。立ち上がったままオロオロしているうちに、屋敷の執事が呼びにきた。
話によれば母子ともに健康らしい。アネットの方は支度があるからともう少しかかるが、先に子供の方を連れてきてくれたらしい。
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