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「アレクシス様は夕刻に、旦那様と奥様も夜前にはお戻りになるそうですので、今宵は夕食をお二人ともご一緒にと仰せつかっております」
「面倒いな。あと、僕は通常の食事取れないよ。水分多め、塩分控えめ」
「騎士団の医療府から、そのような指示書を頂いておりますのでご心配には及びません」
「あっ、そ」
素っ気ない態度で自ら車椅子を動かし、ハムレットはソファーに場所を移す。それを確認したチェルルに、今度は老執事の方が問いかけてきた。
「チェルル様は、何か苦手な食材や味はございますか?」
「え? 俺……ですか?」
「はい」
思いもよらない質問に戸惑っていると、ハムレットの方から「ないよ」と答えが返ってくる。実際ないから問題無くて、頷くだけだった。
「必要な物がございましたら、なんなりとお声がけください」
「はい、有り難うございます」
丁寧にされて、老執事は下がっていく。
その背を見送ったチェルルは、何とも場違いな感じに息をついた。
「猫くん」
「あっ、なに?」
「こっちきて」
ハムレットが呼んでいる。それに従って庭の見えるソファーへと向かうと、突然腕を引かれた。
「うわぁ!」
意表を突かれてバランスを崩したチェルルはそれでも倒れ込みはしなかった。強い衝撃でまた痛み出したら。それを思うと無理矢理にでも体勢を立て直した。
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