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たまにはいいように思う。外で待ち合わせなんて、デートっぽい。それにファウストがどんな格好で来るのか、ちょっと楽しみだ。「デートなんだから、黒はなし!」と厳命してきたんだし。
そうして本を読みつつ紅茶を飲んでいると、不意に二人分の足音が近づいてきた。
「あ、あの! すみません。お一人ですか?」
「え?」
顔を上げると、そこには二十代の女性二人が立っていた。ランバートよりも多分、年齢は下。前にいる女性は顔を真っ赤にしているし、その女性に隠れるようにしている女性は清楚で可愛らしい感じがした。
「あの、もしお一人ならご一緒させていただけないかと」
「あ……」
これもなんだか久しぶりだ。いつもはファウストが側にいるから、そもそも声をかけられない。久しぶり過ぎて新鮮に思える。
「実は、待ち合わせをしているんだ」
「でも、もう三〇分以上待ってますよね? その方がいらっしゃるまでで構いませんので」
もの凄く勇気を振り絞っている感じなのに、なかなか諦めない。いや、むしろ勇気を振り絞ったからこそ、簡単に引けないのかもしれない。
「俺、恋人いるけれどいいの?」
「うっ!」
隠さずに、ちょっと悪戯っぽく言ってみたら流石に怯んだ。ぐぐっと考えている。それでも踏み込もうとした女性の後ろから、長身が見えた。
「ランバート?」
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