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驚いたような間抜け顔、そして見慣れない姿。両方に笑って、待たされたなんて何も気にならなかった。
「ごめん、連れがきたみたい」
「え!」
女性達はきっと、女性が来るんだと思っていたんだ。けれど来たのはファウスト。その容姿にも面食らったに違いない。
そこで、悪戯心が沸き上がりランバートは女性達にそっと「アレが俺の恋人」と、まるで悪戯を囁くように言った。
「しっ、失礼しました!!」
今まで大人しかった背後の女性が顔を真っ赤にして、もう一人の腕を掴んで逃げていく。その様子を笑ってみていると、ファウストが何事だ? という様子で近づいてきた。
「今の……」
「魅力的な恋人を一時間も待たせるからじゃないか?」
「すまない、色々と確認事項が重なってしまって」
「終わらせてきた?」
「問題ない」
向かい合わせの席に座ったファウストを、上から下まで見回してしまう。
白の薄手のニットに、チェックのシャツ襟が覗いている。下は黒のスラックスだ。
黒のイメージがあるファウストが真逆の色を着ているのは、どこか新鮮だった。
「なんだ」
「いや、見慣れないなって。どうしたの、その服?」
「昔に一度だけ着たのを思い出したんだ。お前が黒は嫌だなんて言うから。これでも苦労したんだぞ」
「分かるよ、苦労のあと」
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