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「ボリス?」
「そうだよ?」
「本当にボリスだよね?」
「なに? 俺の偽物でもいるの?」
からかうと、フェオドールの目に涙が浮かんだ。そして人目もあるだろうに気にもせず、突進するみたいに胸に飛び込んできた。
「うわ! もぉ、どうしたのさ」
「だ……手紙、返ってこないから、返せない事情があるんじゃないかって」
「あ……」
なるほど、不安になっていたわけか。
これは悪い事をしたかもしれない。不精したせいで、悪い事を色々考えたんだ。そういうネガティブな部分もあるのに、失念していた。
グズグズしているフェオドールを受け止め、ポンポンと頭を撫でたボリスは素直に感情を表すフェオドールを優しく見ていた。
「とりあえず、入れてくれる? 今日は外泊出して来たから、明日の門限まで一緒にいられるよ」
「んっ、ごめん。あぁ、どうぞ」
グイグイ涙を拭って、少し表情を引き締めたフェオドールが中に案内してくれた。
エントランスが一応はあって、正面がサロン。左手側は応接室や使用人の部屋があるそうだが、今は未使用とのこと。右手側が主な生活スペースで、ダイニングや談話室、キッチンなんかもある。
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