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周囲はバタバタしているのに、シルヴィアはとても落ち着いてそんな事を言う。
見ればアネットのお腹ははち切れんばかりに大きくなって、ベッドに結わえられている紐を握り耐えているように見えた。
「アネット!」
駆け込むように側に行くと、気丈な目に涙を浮かべてこちらを見た彼女の表情が、多少引き締まって笑った。
「き、たの?」
「当たり前じゃないか!」
「しっかり、仕事しなさいよ、っ! 心配なんて……」
断続的に強く痛む様で力が入るのが分かる。それでもこのいいようだ。
「大丈夫、ちゃんと終わらせてきたから。側にいるから」
「いらなっ! 女の仕事よ」
「でも……」
「痛いってのに側で心配顔されると、イラつくのよっ」
笑いながら言うアネットの額に冷や汗が浮かんで、それでも平気な顔をしている。それが辛くて、でも彼女の言う通りどうしたって代わってやることはできない。
「開いてきましたね」
「アネットちゃん、頑張ったわね。もう少しだから、頑張りなさい」
医者が診察をして、シルヴィアが声をかける。これにはアネットも素直な表情で頷く。
そしてヴィンセントの肩をジョシュアが叩いた。
「行くよ、ヴィンセント」
「でも!」
「医者か神父でもなければ、男は不要な場所だ。どっかりと、待つんだよ」
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