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静かに言われ、アネットも頷く。手を握り、額にキスをして声をかけて、ヴィンセントは部屋を出て談話室へと連れていかれた。
どさりと、ソファーに腰を下ろしても落ち着かない。今頃、苦しんでいるんじゃないかとソワソワする。遠く、呻くような声が聞こえてきそうだ。
ジョシュアはそこにブランデーのグラスを置いて、気付け程度の酒を注いでいく。
「今は……」
「酔わない程度に飲んでおきなさい。お前が死にそうな顔をしてどうするんだい」
そう言われて鏡を見せられて、本当に今にも息が止まってしまいそうな顔をしていた。
向かい側にジョシュアが同じく腰を下ろす。そして、とても楽しそうにヴィンセントを見るのだ。
「あの、なにか?」
「いやね、懐かしいなと思って。私も長男が生まれた時は、今の君みたいだったなと」
「え?」
とてもそんな風には思えずに、パチクリと瞬く。目の前の男はとても取り乱すようには思えなくて、そんなのは似合わなくて。だからこそ意外だった。
「そんなに意外かい?」
「えぇ、とても」
「人を鉄面皮みたいに言って。こんな私にも若くて青い時代があったものだよ」
正直それすらも想像ができないのだが……
そんな事を思うヴィンセントを知らん顔で、ジョシュアは色々と話し始めた。
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