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ジョシュアはそう言って舐めるようにブランデーを飲み込む。
「お前の子だ、賢くなる。生きるための知恵を伝え、困らないようにしてやりなさい。所詮男に出来るのは子供と奥方を愛することのみさ」
なんだかとても、珍しい気がする。普段ジョシュアは仕事の話しはしても、個人的な考えなどは言わない。だからこんなに、饒舌なのは珍しく思う。
「珍しいかい?」
「え?」
「そんな顔をしている」
「……少し」
「この間、息子に下克上をされてね。いや、子が育つのは早いんだと実感したんだ。そろそろ引退かねぇ」
「え!」
思わぬ言葉に衝撃があってヴィンセントは立ち上がった。今彼のような重臣に辞職などされてはたまらない。彼がカールの側について牽制しているからこそ、今のバランスがあるのだ。
ヴィンセントの反応にジョシュアは笑い「落ち着きなさい」と言う。とても落ち着いていられる内容ではないのだが。
「今すぐなんて思っていないよ。だが、後十年もすれば私も六十だ。認めたくはないが年齢と共に力は衰退していくのに、頭は硬くなっていく。そうなれば判断を間違う。そうなる前に育てなければならないよ。陛下も、アレクシスも、そしてお前も」
「私も?」
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