父になる日(ヴィンセント)

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 子供は、薄らと金色の産毛のような髪が生えた女の子だった。顔立ちはまだどちらに似ているなんて分からない。だが、腕に抱いた子は綺麗な緑色の瞳でヴィンセントを見て、ピタリと泣き止んだのだ。 「おや、可愛らしい。これは将来男を振り回すよ」 「滅多な事言わないでください!」  隣りから覗き込んだジョシュアが楽しそうにそんな事を言う。だがそんな困った子にするつもりはない。お淑やかでなくても、男を惑わすような女性になっては色々困る。  そんな事を思っているとアネットの方も準備が出来たと知らせがあり、ヴィンセントは我が子を抱いたままアネットに会いにいった。  アネットは疲れた顔をしながらも、その表情は満足げなものだった。ヴィンセントを見て、得意げだ。  意地らしくも見える彼女を見て、ヴィンセントの方は涙が出そうだった。ゆったりとした白いドレスを纏うアネットの側に行って、そのまま額にキスをする。 「有り難う、アネット」 「なによ、それ。お礼を言われるような事はしていないわ。言ったでしょ、私も貴方の子を産みたいと思ったのよ」  子をシルヴィアが受け取って、抱きしめて、髪にもキスをして。腕の中のアネットは珍しく素直に背中に腕を回してくれる。  今触れる、この大切なものを守っていく。愛しい全てを守れる様に、平穏に過ごせる国にしてみせる。政治家として、それがヴィンセントに出来る唯一の守り方だ。     
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