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不安を悟らせたくなくて柔らかく微笑むと、泣きそうな顔のまま腕を伸ばしてきた。痛むのだろうに、必死だ。受け入れて抱き寄せればようやく、甘える様に体を擦り寄せてきた。
「怖い夢を見るのか?」
問えばランバートは少し怯えた後で、小さく頷いた。
「大丈夫だ、側にいる。不安に思わなくてもいいから」
コクッコクッと小さく頷き震えたまま、ランバートはファウストの肩に身を預けていた。
少しして落ち着いたのだろう。ゆっくりと顔があがり、辺りを見ている。そして何かに気付いて、途端にアタフタした。
「どうした?」
「あ、んっ!」
何かを言おうとして激しく咳き込んで。側の水差しから水を移して飲ませると、少し落ち着いた。
「俺の部屋だ、安心しろ」
「(ブンブン)」
首を横に振って申し訳ない顔をするから、言いたい事が伝わった。この状態でまだ、迷惑をかけたとか思っているのだろう。
「仕事はお前がほとんど片付けてくれているから、何も問題ないんだ。それに、俺がお前の側にいたかったんだよ」
言えばまた、申し訳無い顔をする。そしてファウストの手を取り、その手の平に『ごめん』と書いてくる。
「どうして謝る。お前が苦しい時には側にいたいと思うのは、いけないのか?」
また、ブンブンと首を横に振り、『違う』『迷惑じゃない?』と書き添えてくる。
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