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「何が迷惑なんだ。お前の事で俺は一度だって、迷惑だなんて思った事はない」
伝えたら、瞳が弱く潤みだして胸元に擦り寄ってくる。弱い姿は普段見ないからか、愛しさと庇護欲、そして苦しさが募ってくる。
大怪我をした時もこんなにはならなかったから、戸惑う。だが、だからこそ側にいようと思う。そして可能なら、不安を拭い去ってやりたい。こいつの見る夢の全てを否定してやりたい。
ほんの少しと言ってスープを飲ませ、薬を飲ませて隣りに潜り込む。抱き寄せて眠ると、すぐに腕の中で寝息を立て始めた。
体が熱い、まだ辛そうだ。身を寄せているそれが、僅かに身じろいだりしている。汗を拭って、そっと額にキスをした。
「俺が側にいる。だから、大丈夫だ」
小さな声で呟いてみれば、眠っているのに無邪気な顔をする。今は怖い夢を見ていないのだと分かった。
だからこそ、ファウストも休む事ができる。腕に抱いたまま、互いの体温を感じているのは安心できた。体を繋げる事も、言葉を紡ぐ訳でもない夜。静かな時間は染み入るような穏やかさをファウストにもくれた。
側にいるようになって、眠れるようになったランバートは少しずつ回復していった。
一週間後、まだ辛そうな様子ではあるものの喉の腫れも引いて話しが出来るようになった。
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