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「猫くんが嫌なら、無理しないでね。多分みんな歓迎してくれるだろうけれど、堅苦しいのも本当だから。何か押しつけられたら、断っていいからね」
「でも、そういうのに慣れていかないといけないだろ?」
この人の飼い猫になる。この人と一緒にいる。それは、この人の家に馴染まなければならないということでもある。
頑張らなければ。もっとこの人の家の事を知って、助けられるように勉強して、付け焼き刃でも相応しい振る舞いを覚えて……
思っている間に、馬車の前まできていた。きっちりとした服を着た人が、とても丁寧に頭を下げた。
「ハムレット様、チェルル様、お迎えに上がりました」
「有り難う。チェルル、手を貸してくれる?」
「え! あっ、うん」
前に回って、手を伸ばすハムレットの脇の下に手を差し入れて立ち上がる助けをする。ゆっくりと歩幅を調節して無理のない速度にして。
馬車の足元を確認しながら先に上って、上から少し引き上げるようにして促すと無理がない。階段の上り下りはまだ少し痛むみたいだから。
「クッションをお使いください」
「はい、有り難うございます」
車椅子を丁寧に積み込んだ人が声をかけてくれる。そうして中を見ると、柔らかなクッションが幾つか用意されている。腰を下ろしたハムレットの背中に一つを挟み込み、チェルルは前の席に座った。
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