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【R18】寂しい時間を埋めて(ボリス)
帝国にようやく戻ったのに、何だかんだで落ち着いたのはつい最近。
溜まっている手紙を処理してみると、フェオドールから三通も来ていた。
中身は、王宮を出て小さな屋敷を借りたそうだ。通いの使用人もいて、そこで帝国の事を学んでいるらしい。
『ボリスの手が空いたら、会いたい』
手紙の最後に必ず添えられる一文が、おそらく彼の気持ちなんだろう。なのに一切返信をしなかったから、今頃焦れているに違いない。
「今日って、安息日前日だよね。ハリーもゼロスも風邪でダウンしてるし、コンラッドは恋人の看病で忙しそう。久々に出ようかな」
素直じゃなくて可愛いけれど、素直は素直で可愛いと思う。久しぶりに会う恋人を驚かそうと、ボリスは着替えて宿舎をあとにした。
フェオドールの家は西地区の奥、閑静な場所にあった。
小さめだけれど、一人で暮らすには十分過ぎるだろう広さはある。明かりがついているから、ボリスは安心してノッカーを打った。
「どちら様ですか?」
「招待状を貰ったんだけど」
怖々とした声にからかうみたいに返すと、次には勢いよくドアが開いた。そしてそこに、とても簡素な格好をしたフェオドールが驚いた顔で立っていたのだ。
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