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『ぬくもり』とはなんだろうか?俺は考える。
俺たちの家族は母、父、俺、弟の4名で構成されている。どこにでもいるような一般的な家庭で特にこれと言ったものはなく、仲のいい家族だ。
しかし俺には欠点がある。それは俺がこの人たちの家族ではないということだ。要は養子でこの家族と血が繋がっているわけではない。そんなことを知ったのは1ヶ月前の冬のことだった。
生まれた時のことを書いてくる、というのが今回の冬休みの宿題だった。
母さんに母子手帳を見せてと頼んだところ最初は「無くした」とか「倉庫の奥の方にある」だとか言っていた。けれども父さんが帰ってきて事情を話したら
「ちょっと待ってろ、話したいことがある」
と言って自分の部屋に戻ってしまった。その時のことは今でも頭の中に焼き付いているから鮮明に思い出せる。そしてその時の父は普段より背中が少し大きく見えたような気がした。
数分後、父さんが俺たちのいるリビングに来た。ついでに弟もなぜか来ていた。
皆んなが席に座って話が始まるかと思えばそうでもなかった。
しばらく皆んな無言だった。弟はいつもお喋りなのにこういう時だけ空気をよんで黙っていて少しその性格を恨んだ。
仕方なく俺が
「どうしたの?」
と話を切り出すと母が重い口を開けた。
「何があっても貴方は私たちの大切な息子だから。これだけは忘れないで今から私たちの話を聞いてくれる?」
なんとなくだが察しはついた。まだ15歳の子供だけどもう15歳だ。
俺は言葉を発したくなくて、代わりに頷いた。
するともう一度母が話した。
「貴方が母子手帳はどこ?と聞いてきたじゃない?それで私は無くしたなんて言ったけど本当は違うのよ。本当は母子手帳なんてものはないの。なんでかと言うと私たち夫婦は妊娠が難しいとお医者さんに言われたの。だから児童養護施設から貴方を引き取ったのよ。だ」
「だから生まれた時の記録がないと。そういうこと?」
俺は母さんの言葉を遮って言った。
そのあと父さんが何か言ったり母さんも同じようなことを言ってたような気がしたが俺はそれどころではなかった。頭が真っ白になった。
するとこの場に居たくなくて自分の部屋に急いで戻った。
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