日課

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 冷蔵庫にあったもので遅い昼食をとって、時間が流れるままにぼけっとしていた。そのうち居間に夕日が差し込んで眩しさに目を細めた。視界の端を、ふうっと通り抜けたものがあった。 「しゅういちくんしゅういちくん」  姿を認めたのと同時に、甘い花の香りが鼻孔をくすぐる。彼と祖母風に言えば、口当たりの軽いやつ。 「ちよちゃんはどこ」  お下げにちょこんとリボンを結んだ少女は、部屋の様子をその身に透かしながらふよふよと天井を漂っている。彼女の着物の袖もひらひら舞う。  丁度そのとき彼の携帯電話がメールの着信を知らせた。開くとまだ荷物を広げる前の木調の部屋の写真と、『今日からここに住みます』という一文が添えられていた。写真を表示した画面を少女に見せる。 「千代さんはここ」 「どうして?」 「千代さんだから」  ちよちゃんだから、と少女は含むように言って、それからぱっと笑顔を見せた。ちよちゃんだから、と何度も繰り返してくすくすと笑う。  それを眺めていた舟市も、千代さんだからなあと段々気持ちが落ち着いてきて、少女がいてくれたことに感謝した。『きれいなところだね』と返事を送信して立ち上がる。 「日が暮れてきたし、そろそろ行こうかな」  とりあえず着替えよう、と舟市は気分を変える。
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