日課

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日課

 結局祖母が何に気をつけてほしいのか聞けぬまま、舟市は彼女を送り出した。携帯電話もあるしいつでも聞けるだろうと暢気に構えている。  代わりに彼を困らせたのは千代を迎えに来た両親に、来月には彼女と舟市が住んでいた家を売ってしまう予定で、掃除もしたいから早めに家を出るよう言われたことだった。彼は祖母の家から大学に通うつもりでいた。両親の住むマンションに戻らないかと言われたがそれは嫌だったので、舟市は来月からの住処を探さねばならなくなった。ついでに担任教師から教科書を取りに来るよう電話があったことも伝えられたが無視した。 「どーしたものかな……」  ぽつんと一人だけになった家の中で呟く。祖母の荷造りを手伝いながら気づいたが、もともと彼女は自分がいなくなったときのための準備を周到にしていたようだった。不必要だと思ったものは既に売ったり譲ったりしていたようで、荷物を詰め込んだ鞄は三つに収まってしまった。もっと色々あったはずだと思っていたのに、もしかしたら舟市の方が今は持ち物が多いかもしれない。密かにショックを受けていた。     
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