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「もし困った時があれば全力で手をお貸しします。まぁ、必要ない気もしますがね。では、こちらをご確認ください。これはフォーティスさんのこれからの負担と不安を取り除くための私からの救済処置です」
指を叩き終えたカルネは、黒い文字でびっしりと埋め尽くされた紙を夫婦の方へ差し出した。
夫婦は食い入るようにその用紙を読み始めた。
「2歳まで力が目覚めなければ5歳まで力が目覚めないのは確定……」
フォーティスが読み上げるとレクイムは「そんな、そんな馬鹿な! これはインチキだ!」と激情して机を叩きカルネを睨みつける。
そんなレクイムにカルネは凍るような冷たい視線を向け「最後まで読むこともできねぇのかてめぇは……」とボソリと暴言を吐いた。
カルネの冷えた怒気と、レクイムの爆発しそうな怒りにセレーネは恐怖で身を縮めた。
「おま、お、おま、おまえ……!」
レクイムは怒りで興奮しすぎて上手く舌が回らないようだった。
「許さん、絶対に。絶対に、許さん――――!」
肩で荒く息をするレクイムが懐から愛用の杖を出した。
それが戦闘用の杖だとその場にいる全員がわかった。
「待って!」
フォーティスが慌ててレクイムを制した。
「五月蠅い! 俺は、もう、我慢ならん! ナタだけでなく、俺を侮辱しやがって――」
「ナタは侮辱されてないわ! ちゃんと見て!」
フォーティスが紙をレクイムの目の前に突き付けた。
レクイムは怒りで息を荒げながらもフォーティスが指している文を見る。
”以上のことから、力に耐えるためにナタは体の成長は周りより早い”
”故に、ナタの力は賢者であることが確定。目覚めるのは5歳頃で間違いなし”
レクイムの目がこれ以上ないほど見開かれる。
「賢、者……?」
それは、魔法使いと僧侶を極めた凄腕の者だけが会得できる力。
故に、生まれ持って持つのは希少な力であった。
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