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マレーヴェの大きな声にカルネは発言を止めそちらを向く。
「ああ、そうか……そういえばそうだったわね」
園長が呟き、他の職員もマレーヴェを見上げた。
これは、予知でも見た出来事。
「せっかくの運動会、そしてお子さんの観客もたくさんいらっしゃる、ということで、お子様乱入競技と移ります! 今回は代表者が1名のみで子どもの人数は自由! 代表者は今までの競技の参加の有無関係なしで構いません。ただし、ポイントはもちろん勝ったら入りますのでそこのところはご理解のほどよろしくお願いいたします!」
マレーヴェの説明に観客が沸き上がった。
その歓声を聞きながら、ツボネが待機席から前へと出る。
「園長。私は事情をあまりよく知りません。なので先ほどの会話の内容もよく理解していません。しかし」
ツボネは振り向くと、鋭い目で園長を睨みつける。
そして、にたりと微笑んだ。
ちなみにこの笑みは、他から見るとものすごく気味の悪くて怖い笑みだが、本人はふわりとにこやかに微笑んでいるつもりだ。
彼女の顔は、女性として最も強面な顔と言われるものだからこそ、そういった表情となってしまう。
ツボネは笑みを浮かべながら、言った。
「試合は、容赦なしでよろしくて?」
自信に満ち溢れた声。
アンファンの職員を園長の変わりにまとめあげる主任である彼女。
その声音の迫力は絶大で、ああ絶対勝つわこの人、と職員全員が同時に思ってしまえるほどだった。
「ええ……もうそれは、遠慮なく」
園長は満面の笑顔で、恐ろしいことを平気で言った。
遠慮なく、それは、好きに暴れてこい、というGOサイン。
ツボネは笑みを浮かべながら観客席の方を向くと、両手を広げ、叫んだ。
「さぁ、アンファン5歳児! 参りなさい!」
その声と共に、「はーい」という可愛らしい返事をしながら子どもたちが飛び降りてくる。
ある程度魔力を安定させている子どもたちは、空中浮遊したり、足元に風やら水やらクッションを作ったりと各々の得意な魔法を使いながら降りてきた。
子ども参加型。
それは恐らく、アンファンにも劣らぬ保育力をマヴァイス国も持っているぞ、と他国にお披露目するため。
とことんイルド国に喧嘩を売りたいらしい。
その意図をカルネの予知であらかじめ知っているツボネは不敵に笑う。
「フフ……ぐうの音も、出ないようにしてあげましょう」
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