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「おまえら、急げ、急いで掘るんだ!」
デルダはあらん限りの声を出して子どもを急かした。
だが、そこはやはり子ども。
慌てると余計に魔法に失敗したり、道具で上手く土を掘れなくなったりしていた。
浅い場所にあった子は10人ほど1つ手に入れていて今のところこちらの獲得数が多いが、安心できない。
デルダはもう身に染みてわかっているのだ。
優れた医療チームの治療を受けて傷はいえているが。
体の奥底に植え付けられた恐怖は根強く残っている。
アンファンという、化け物の巣の恐ろしさを。
「わああああ!」
「きゃあああ!」
マヴァイス国の子どもたちの悲鳴にデルダは急いでそちらを見た。
そして目の前の光景に、唖然とすると同時に、悟りを開く。
――――ああ、ここは、遊園地かな
あるものは風で穴を掘り砂嵐を巻き上げ宝石を入手し。
あるものは固い砂をさらさらに変えてそのまま埋まり、出てきたときには両手いっぱいに宝石を持ち。
あるものは光の柱のない所も含めて楽しそうにドリルでどんどん穴を作っていき。
またあるものは何もない地面から花を咲かせ、その咲いた花から宝石を入手していた。
だが、何よりも。
なによりも恐ろしく、圧倒的力を見せるのは。
空中で炎に覆われた男の子だった。
その子の周りには梟、隼、鷹、燕など、様々な鳥の形をした炎が飛び回り、地面に潜ってはマグマのような跡を残して宝石を男の子の手へと渡していっていた。
フォーティスの息子であり、ナタの兄。
トリタだ。
高い魔法力を持つ魔法は腕ある冒険者顔負けのレベル。
元の魔法力の高さだけでなく、ツボネやフォーティスによるスパルタ教育で繊細な扱いも可能としている。
デルダは瞬時に悟った。
きっと俺は、この少年にも勝てない、と。
子どもだけとは思えない目の前の魔法や技や道具が飛び交う光景に、流石のマレーヴェも言葉を失う。
情報量が多くてどう説明すればいいのかがわからない。
目立つ炎を纏う子に目を奪われがちになるが、他の子も目を見張るほど凄い技を持っている。
その中心で、悪魔の儀式でもしているのかと思わせるほどゾッとする恐ろしい笑みを浮かべたツボネが、羅針盤を翡翠色に光らせている。
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