アンファンの力

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「な、何が起こっているのでしょうか……わ、私は、夢でも、見ているのでしょうか……こんなに高度な、魔法や、技が飛び交う光景は……この人生の中で見たことありません……」 そう述べるのが、やっとだった。 嘘をつこうにも、何か誤魔化そうにも、目の前の光景が衝撃過ぎて頭が働かない。 ただただ、事実を述べ、その感想を捻ることなく伝えることしかできなかった。 だから告げるしかなかった。 マヴァイス国の敗北を。 ディバル騎士団学校で選りすぐりで選ばれた子どもたちでも敵わないならば。 敵う者などもういないに等しい。 マヴァイス国は、最初のスタートダッシュで入手できた10個のみ。 後の残りは全て。 アンファンの子どもたちが嬉しそうに持っていた。 「マヴァイス国10個……アンファン、91個……。勝者、アンファンです」 声を張り上げることなどできなかった。 何せ、ここで思いっきり勝ち星をつける予定だったからだ。 だが、ここまで圧倒的だとそんな自信はあっさり打ち砕かれた。 そして、残りの競技は少ない。 ここでアンファンの勝ちを告げることによって。 マヴァイス国は。 もう、敗北したと言えた。 それは観客も思ったことだろう。 「おめでとう」という喝采が子どもたちに送られていた。 その和やかで温かい様子を目にしたディバルの拳は、震えていた。 「ふざけるな……」 たかが保育士に。 屈強な騎士団と、優れた技を持つ親衛隊が負ける? 「ふざけるなああああ!」 ディバルの怒号が会場全体を揺らした。 その声の迫力と大きさに、子どもは委縮し大人たちも驚いてディバルに視線を向けた。 全ての視線がディバルへと向く。 「ふざけるな、ふざけるな! たかが子どもと遊んでるだけの保育士にほぼ負けるだと!? そんなことがあっていいわけがない! こんな負けなど認めん! そうだ、ズルをしたんだ、そうだお前らがズルをしたんだ!」 必死に叫ぶディバルはただただ見苦しく、流石のマヴァイス国側の観客もその姿に目を逸らした。 だが、アンファンの職員たちは目を逸らさない。 ”たかが子どもと遊んでるだけの保育士” その言葉が、許せなかった。
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