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最後のお客を送り出して、夏希ちゃんは厨房の後片付けまでをこなす。
ここまでが本日のバイトだ。
「はい、お疲れさん! 今日のバイト料!」
「有り難うございます」
マスターから封筒を受け取り夏希ちゃんはカメラに向けて、自分が稼いだ金額を見せる。
これで今日の撮影は終了のようだった。
「しかし、今日は返って加勢してもらったようなもんだな!ははっ…ほんとに働く気はないかウチで!」
機材を片付けるスタッフ達を横目にしながら口説くマスターに夏希ちゃんは笑って返す。
「芸能界引退したら次の就職先もう決めてるんで」
そう言いながら夏希ちゃんの目があたしにちらりと向けられた。
軽く断られマスターは本気で残念そうな顔を見せている。
あたしはと言えば…
何故か真っ直ぐ過ぎる夏希ちゃんの気持ちに少しばかり戸惑いの感情が沸いていた。
「………」
然り気無く目を背けたあたしのよそよそしさを感じたのか、軽く目を見開いた夏希ちゃんの視線が背中に刺さる。
何となく目を見れなくてあたしは店仕舞いに忙しい振りをして誤魔化した。
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