21章 愛し合ってるからこそ

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・ 「撮影って30分? 一時間くらい?」 「まる一日」 「え!?」 あたしはニコニコして答えたママに驚きの声を返していた。 まる一日…… この状態…… カメラやライト、マイクを持ったスタッフが狭い厨房でごちゃごちゃと入り乱れる。 「まる一日……そんなにうちのマスターの撮り処ってある!?」 「ひどいな晶は…」 マスターが苦笑いしながら背後から呟いた。 「だって一日って…」 結構な時間だ。 料理する姿以外、昼を過ぎればあとは煙草吸うか珈琲飲んで寛ぐか… そんな絵しか撮れない筈で。。。 そう疑問を浮かべるあたしにマスターが口を開いた。 「今日は厨房はフル回転で働くぞ」 「フル回転?」 「ああ、厨房見習いがバイトにくるからな! 色々教えてやらにゃならん!」 「見習いバイト?」 意気込むマスターを尻目にしながらあたしも店の準備に取り掛かると、表にいたスタッフが何やら合図を出していた。 「藤沢さんが見えました!」 藤沢っ!?…… 振り向いた裏口では今朝送り出した筈の夏希ちゃんが、仕事用の笑みを浮かべてマスターに挨拶していた。
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