21章 愛し合ってるからこそ

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・ 自慢の特製メニュー。普段はスープとサラダが付いて890円のオムライスが、本日は500円でいつものセットにデザートのヨーグルトソルベが付いてくる。 店は当然、大盛況! Aセットのグラタンより、Bセットのオムライスの注文ばかりが続いている。 よって、夏希ちゃんとマスターはフライパンを振りっぱなしだ。 オムライスを作る腕は昼を迎えた一時間で尚更上達している様だった。 夏希ちゃんが作ったオムライスを食べるお客にカメラが向けられる。 ホールを撮影するその様子をお客は気にしながら口を動かしていた。 お客はまさか俳優の藤沢 聖夜が厨房で腕を奮ってるなんて予想もしておらず…… そんなお客にドッキリを仕掛けるように、エプロンをした夏希ちゃんがホールへ顔を出す。 「今日の特製オムライスは如何でしたか?」 食べ終わる頃を見計らい、急に声を掛けた夏希ちゃんに常連の二人は驚いて口を押さえる。 ニッコリ営業スマイルの藤沢 聖夜を間近で見て、OLの二人組は目を見開いていた。 いきなり厨房から登場した芸能人に言葉も出ないままでいる。 「そのオムライス、俺が作ったんですけど…」 夏希ちゃんは伺うように笑っていた。 厨房での仕事振りと、俳優の藤沢 聖夜に戻った今の夏希ちゃんの二つの面をあたしは垣間見て思う。 この人が── あたしの恋人、柏木 夏希。。。 なんだかそれが、あたしにはとても…もったいない気がしていた……。
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