【前話】 二年前

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【前話】 二年前

「がんばれ~」  なんで俺、こんなトコで座ってんだろ。 「ファイトォ~~~」  こんなコト言って、めっちゃ笑って、ナニ言ってンだろ。 「…………うん」 「……おう」 「…………」 「おいぃぃぃ~~~、何て顔してんだよぉ~~~」  こいつらも、さっさと行けばイイのにさぁ~~~ 「ホレ行けって! ファイトっ!」 「……その」 「うん、あの」 「イイから行けってば!」 「………………」 「………………」 「………………」 「おいぃぃ~こっちは気にすんなってば~張り切って行け~」  バン! と背を叩き、笑顔満面でハッパかける。 「全力出して行け~~」 「…………おう」 「……じゃあ」 「……行ってくる」  チラチラこっちに目向けてくるし、ニカッと笑って大きく手を振った。 「集中集中!」  半端に笑ったり手を振り返したりしながら、仲間三人はフィールドへ駈け出した。その背を追う目がじわりと湿ってくる。  みんな、仲間以外もそこに集ってるやつらはみんな、今日までの成果を出すべく集中し始めてる。あいつらの眼差しの向くところ、それがどこかって俺は知ってる。俺もずっと見てたとこ。  俺も、あそこに────  悔しい。悲しい。悔しい。悲しい。悔しい。  どん底な気分。  顔はフィールドを見てる。  応援の声も出てる。笑顔も作れてるはず。  けど涙が滲んでなにも見えてない。  ──────あんなに練習したのに、なんでこのタイミングで、なんで俺だけ……  ダメだ、ちゃんと見なきゃ。そんであとでNG出してやるんだ。いつもみたいに。  ぐいっと腕で目を拭って、グラウンドを見る。しっかり見なきゃ…………そのとき。  目に飛び込んだ。  なにあれ  なんなの  バリヤバ  いや…………これこそ理想の────  あまりの尊さに涙も乾く  それはまさに、神降臨の瞬間────だった
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