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つーか、やっぱ置いてくわけに行かねえしなあ、まだ痛いンかな、とか思うしなぁ、加賀谷さん見張ってろって言ったし。
しゃーねーから横に体育座りしつつ、ため息混じりに声かけた。
「やっぱ痛いんスか」
「……大丈夫だって言ったのに」
項垂れたまま呟くみたいな声。
なんかな、焦ってんのかな? 分かんねーけど落ちてるし、話しかけにくいなあ。どーすっかな……。
ココはいっちょ慰めるとかしとく? てか俺ってそんなスキルあったっけ? スキルねーのにやっちゃって良いのかなぁ、とか思いつつ、いちお目一杯明るい声出した。
「ちょい休んだら、きっとだいじょぶッスよ」
答えないし顔も上げない。う~ん、悔しいンかな? かもな。そういうの分かんないじゃねーしな~~、肩とか背中とか叩いてみるべき?
ンでも知らない人だし、んな馴れ馴れしくしてイイのかな?
「てかこういうのって、いきなり来るんスよね~。加賀谷さん戻っても痛いまんまだったら、チャリの後ろ乗って帰りますか」
「……素人が」
「へ?」
「経験者みてーな事言うな」
「え、いや俺、マジ経験者なんで」
「……は?」
そいつは顔上げて、コッチ睨んでくる。
「テキトー言うな」
「ひっでぇなあ~~、マジで膝やったんすよ? だいぶ前なんスけど、いきなり来たんでクッソ焦った~」
「…………」
「いきなりアレってめちゃ怖いし、だから休んだ方がいいスよ」
ニッカリ笑い返すと目を伏せ、「……悪い」ふて腐れたみてーな声出した。
「いや、もうだーいぶ前なんで、ゼンゼン平気っす」
「てか……タメだろおまえ。フツーに話せよ」
「ん? あはっ、そっかー、だなー。てかマジで、だいじょぶ? てか膝? ふくらはぎ?」
「膝……っぽい」
足の間に頭落とすみたいに落ち込んだ風情のそいつは「コウガミ」と呟いた。
「ん? なに?」
「俺、コウガミ。スポーツ科一年。おまえは?」
「安原。普通科一年。そんで加賀谷さんのシモベ希望!」
グッと拳握りつつ、こないだからの野望をくちにすると、コウガミはククッと笑った。
「……加賀谷さん……か。……なんかあの人すげーよな」
「あっ! やっぱそう思う!? だよねだよねサイコーだよねっ!」
またキタか推し語りタイム! 自然にテンション上がる。
「うん。なんつーか揺るがない感じとか。こっちまでやる気そそられる」
「分かる! なんつーかオーラが神々しいつか!」
「なんだそれ。……でも優しいとこもあるよな」
「そそ! なにげに優しいよね! 部屋まで入れてくれるし!」
「おまえ加賀谷さんの部屋に入ったの? 俺入ったことねえよ」
「いーだろー? なんつってもシモベだかんな!」
コウガミはプハッと吹き出し、
「だからなんなんだよソレ」
クククと肩を揺らす。おっ、元気戻って来た? ちょいホッとする。
「顔怖いし厳しいけど、日曜とか連休とか、食堂やってないときはメシ作ってくれたり」
「うあー、なにそれレア情報! ちょ、そこら辺もっと詳しく!!」
「あのひと料理までうまいんだよなー。成績もトップクラスなんだぞ、スポーツ科なのに」
「うんうん! そこら辺詳しく! まず料理! どんななの!? うまいってどんな風に!?」
「食いつくなあ。そうだな、一番うまかったのは……」
「うんうん!」
そこから語りはヒートアップした。
なにせそれまで知り得なかったレア情報をかなりゲットできたのだ。コイツ使える!
今後もコウガミとは仲良くやっていこう!
そんな決心と共に、途中からついて行けなくなったコウガミが引き気味になってるとか、まったく気づかないままテンションはどんどん上がる。
つーかコウガミが神の手料理絶賛するから、超絶羨ましくなりつつ、もっと教えて~になるよね当然!
てか風呂で一緒になることある、なんつうから!
マジかーーーっ!! なにソレどんな天国? とか興奮しつつ、身体の洗い方とか、浴槽ん中で足のマッサージしてるとか、色々聞きだしてさらに興奮、もっと聞かせろと突っ込みまくった。
徐々に苦笑気味に言葉少なくなってくコウガミは放置で、ゲットしたての情報はピンク気味の妄想に発展して、いつ鼻血出てもおかしくないくらい興奮しまくってた。
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