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追っかけていきたいけど、でも加賀谷さん待ってろって言ったし、寮の中分かんねえし、ウロウロして迷子になってはぐれたら永遠に逢えないかもだし……うん、待ってる方がイイのかな。ンでも同じ屋根の下に神がいるのに、玄関前のホールで一人って。
(……てかもし、このまんま放置されたら……)
うぐぐ……と泣きそうな気分になる
(いやっ! だったら208の前に行けば! いずれ部屋で寝るんだし!!)
再度拳握りしめてたら、声がかかった。
「おお~郁也クンなにしてんの」
とかって奥沢さんがヘラッと声かけてきて、ハッとした。
そうだよ! 寮生しか知らないレア情報ゲットのチャンスじゃん!
「あのっ! ちょっと聞きたいんですけど!」
なんつって話聞いたら、なんと奥沢さんは神の隣の部屋だって!
マジかーーーーーッ!!
コレ聞きたいこと山ほどな世界じゃんっ!!
前のめり気味に色々聞いてたら、他の寮生のひとたちも集まってきて、色々教えてくれて、ぐぐぐぐぁぁ~っ! なにコレ楽しい~~~っ! 推し語りまたキターーーっ!!
「おまえら……」
はっ! 神の声っ!! 瞬速で振り返ると、戻って来た眉寄せ超絶キュート加賀谷さんがっ……えっ!?
「メシの時間だぞ。なにを騒いでる?」
周りに集まった人たち見ながら、めちゃ不機嫌な声出してる神……の手にある、それっ……!
ホッカホカの親子丼的なモンとみそ汁と漬け物の載ったトレーが! 神の! 御手に……! てかそれって……それって……っ
「も……しかして……」
声が震える。さっきコウガミと喋ってたとき、羨ましくてたまんなかった、夢に見そう、つかぜってー夢に出てくる、そんで食えない己に涙するしかねーって覚悟した神の……手料理スか──!? ワンチャン加賀谷さん作ってくれた、てコト──ッ!?
感激っす!! 涙モンっす!! あっマジで涙が……っ! 出ちゃうよねっ出るよそりゃっ!
したら神々しくギッと睨み…………神は、言った……!!
「俺の部屋に行け」
キターーーーーーッ!!
来たコレっ! 部屋で! 二人で! 二人っきりで!
メシ・タァーーーイムッ!! キッタァァァァーーーーーッ!!
なんつう……なんつうぅぅぅぅっ……!
「いやあ、郁也くんイジっ……喋ってると楽しくてさ。な、みんな?」
「意味不明だけど」
「いじり甲斐あるなコイツ」
「おう、ここまでイってると面白い」
とか言ってる周りの声なんて、絶賛感激中でまったく聞こえない、けど呟くような低い声はしっかり耳に入る。
「食堂は席が決まっている。部屋で食ってろ」
「……あ~~~……、俺一人で、すか……?」
「当たり前だ」
────いやっ!
手料理ってだけで、もうサイコーっす!! 贅沢は言いませんっ!! 超絶感動ッス!
「分かりましたっ!! 部屋で堪能させてもらいますっ!!」
しっかりトレーを押し戴いて、そろりそろりと208へ向かう安原郁也の後ろ姿を、そこらにいた全員が生ぬるい笑みで見送り、次いで意味深な笑顔を向けられた加賀谷、無言で盛大に顔をしかめたのだった。
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