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18.スパダリ研究(Side安原)
シモベにしてもらおうと考えた日。シモベとはなにか、めっちゃ考えた。
可愛がって貰う? いやいやなにも言わなくても通じ合う的な、神と俺の間に5Gなんてメじゃねえくらい高速で通じちゃう的な! なにそれ! めっちゃいい!! それだ!!
んでもまだ俺の気持ち通じてねーしな……まずなにしたらいい? もっともっと近づいて、気付いたらそこにいる、みてーな感じになるのが理想だけども、いきなりソコまでは無理かなやっぱ。
なんて考えながら部屋に戻って、なんかヒントねーかなと思った俺は、以前見たゲイビを改めて見直し、前もそうだったけどあんま興奮しないまま、頭を抱えて雄叫び上げた。
「ちっげーよ!」
なんかグッドでナイスな情報ねーかな~、と思って見てみたのに記憶に間違いなかった!
「ダメじゃんほぼヤッてるだけじゃん! ヤる前の付き合い始め的な、そーゆーのが欲しいのっ! ヤリ方だけ覚えてもさ! その前段階! どーしたらいいの!?」
キレてもゲイビはヤってるだけだし、あ~~もういい!! 動画止めた目は血走っていた。
こんなの見てる場合じゃねえ他のとこから情報集めなきゃじゃん、ともう必死で考える。
ンで雑誌とか! つって本屋行っても、ビビッと来るのなんて無いわけで。なんつーかこう、コレッ! て感じが来ねえつうか。
まあこんな田舎の本屋にゲイの純情刺戟するような本とか置いてるわけねえよな。やっぱそこらの本屋じゃダメなんじゃね? ゲイビだってネットで買ったわけだし。んでも通販って中見れねーし、ビビッと感は直に見て感じ取るもんでしょ!
つーわけで次の日曜、加賀谷さん実家に帰ったし、電車で遠征して大型書店に行ってきた。今はお話しできるようになってる俺は、前みてーに実家の窓見上げて指くわえてる頃と違うんだぜ! 一日くらい神の御姿見逃したって……悔しくなんかねーんだよっ!!
とか気合い入れて行ったのにさ、本にビニールかかってるってどゆこと!? とかキレ気味になりつつ雰囲気良さそうなのめっちゃ厳選して数冊買って、ついでにクラスの女子がキャイキャイ言ってるの聞いて、ちょびっと興味のあったBLマンガも買った。
けっこう高かったけども、これで加賀谷さんに可愛がってもらうんだ~~、とか鼻歌出る勢いでウキウキ帰宅。
「なに、気色悪い」
とか言う妹に、フフンと余裕な笑みで言った。
「ぜってー入るなよ」
「入れって言われても断固拒否するよ!」
怒鳴り返されたんで、安心して部屋に入り、一番期待してた一冊を開いた。
ワクワクが止まらないままページをめくり……
「ふ、深けえっ! そんなトコ抉られたらっ!」
「おらおらおらぁっ! コレが気持ちいいんだろぉぅっ!」
「おおっ、おおっ、ダメだ俺っ、たまんねぇよぉっ!」
……ちょっと引いた。やっぱりほぼ全編ヤってた。かなりオラオラな感じで。他のも見たけど、ゲイの葛藤つか悩み抱えた同士が~的な重い話だったりして。
「……違う」
いやいやいやホンモノの人は大変なんだろな、とか分かるんだよ?
けど今は違うんだって! 違うの求めてんの!
イヤゆくゆくはそんな感じアリアリだけど、今はその前なの! 超それ以前の段階なんだってば!
ガチにゲイの人が読むような本、とか思って選んだのが失敗だったかも。そういうの求めてるんだろな、だからこういうのばっかなんだよな、とかさ?
てか俺だって最初欲しかったのこういうのだった。こういう感じで加賀谷さんに押し倒されちゃったらッ!? どうする? どうするの俺!? とか思ってめっちゃ興奮したし。
これじゃシモベにしてもらえねーよ…… がっかりだよ。
投げ出した雑誌の下に、ついでに買ったBLマンガ。
しょーがねー、今日はこれ読んで寝よ。
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