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「とうとう受け容れて貰えたなんてっ! あ~~そっか!! やっぱ1回死ぬと、大切な物が分かる的な、そういう鉄板スねっ!!」
死んでない。
そう言おうとして言えなかったのは、意味不明なことを言いつつ背に回った腕がギュウギュウ締めてきて、瞬間的に息が詰まったからだ。イラッとして全力で犬の胸を押し、呼吸を確保する。しかし腕の力は緩まない。
「超カンゲキっす加賀谷さんっ!! 俺一生ついていきます~~~~っ!!」
「馬鹿力を……」
こんなときに発揮するな。
イラッとして思いっきり足を踏んだが腕は緩まない。そうだコッチはスパイク、コイツは革靴だ。つまり有効打とならないのだと知り、またイラッとして向こうずねを蹴った。
「痛ッ!!」
声は上がるが腕の力は緩まず、ガンガン蹴り続けても、続く声は嬉しげに震えてる。
「痛いっス!! けど耐えます感激っス!!」
いや、耐えなくて良いから
「離せと言って」
ガンガン蹴る足にこもる力は強まる。
「イタッ! どんんだけツン、イタッ、が来ても俺、イタッ、耐えますからぁっ!! イタッ、俺! イタッ、一生つい、イタッ、てきますぅぅぅ~~~痛いッ!! 」
涙声で叫ぶバカ犬にキツく抱きしめられたまま、絶望的な気分になりつつ向こう脛を蹴るチカラはさらに強まっていく。
ようやく腕が緩んだ、次の瞬間、犬は脛を抱えるように蹲った。
「痛い痛い痛い痛い」
「バカが」
苛立ちしか無い、が思い出した。そういえば膝を故障した選手だった。
涙に塗れた頬を拭うことなく、痛い痛いと騒ぐ犬を見下ろし、病院に連れて行くべきか考える。
────仕方ない。まずは医務室だ。
容赦なく首根をつかんで立ち上がらせる。
「……行くぞ」
「痛い~~~、けど感激っすぅ~~~!!」
「少し黙れ。湿布くらいしてやる。状況次第で病院に……」
「ツンツンツンツンデレきたーーーーっ!!」
だが犬は黙るどころか、痛みとそれ以外による涙を流し叫んでる。「黙れ」と言っても黙らないので手でくちを押さえた。しかしバカみたいな大口を開けてるので覆いきれず、声は止まらない。
「感激っす加賀谷さんっ!! 俺このまま死んでも、いや死んだら加賀谷さんの輝き見れなくなる~~~!! うう俺どうしたら良いんスか加賀谷さんっ!?」
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