真っ白なお部屋の中で

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 仕事終わりの体で東京から戻ってくると、そこは一面の銀世界だった。駅から出た瞬間に、冷たい雪が私の肩に降り積もる。四年振りに見る雪の量に私はため息をついた。  ちぎった綿あめ。幼少の頃は雪をそう思って、喜んでいた。東北にある私の地元では雪が降る時期も早く、積もるスピードも早かった。夜に降ってきた雪が朝には自分の身長くらい積もっている。その度に綿あめがいっぱい食べられると錯覚したものだ。  実際にはただ冷たいだけで味も全くないのだが、祖母がいつも綿あめに変えてくれた。積もったばかりの白くて柔らかい雪に、祖母が砂糖をかけることで私のご馳走になった。  今回帰って来たのはこの祖母が体調を崩し、入院したため。もう長くないかもしれない。その言葉に不安を感じ、会っておかなければならないと思ったのだ。
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