11人が本棚に入れています
本棚に追加
四つ角を曲がったり、信号で止まったり発進をする度に『あっちでゴツン!』『こっちでゴツン!』と身体中がお棺の内側にブツかりまして‥‥
「イテテ!イテテ! 痛いって! アッシは病人なんだっ! 死人じゃねぇんだから、痛覚があるんだよっ! もっとゆっくり‥‥!」
そんなこんなで大急ぎで病院に到着を致しますってぇと、急いで救急外来の入り口に横付けをいたしまして‥‥
「センセー! センセーは居らっしゃいますか?! 葬儀屋ですけど、急病人が出まして!」
「おやおや、これは葬儀屋さん。ダメですよ、こんなところに寝台車を止めちゃあ! 此処は救急外来の‥‥え?『今日のは生きてます』って? 何ですか?そりゃ。ふんふん、どれどれ‥‥ああ、確かに生きてるよ。
おいおい、皆んな来てご覧なさいよ。こりゃ珍しいモンだね、棺桶にお花を満タンに詰め込んだ『患者』ってなぁ私も初めて見るよ。
え、何?『感心してないで釘抜きを貸してくれ』って?『棺桶に釘を打ち付けた時に力を入れすぎて、フタが開きません』って? 意味がわからないよ、まったく」
「さてさて、全員で手を貸しておくれ! この‥‥『まだ死んでない人』を外に出すから!‥‥おいしっょと! で、‥‥アンタは何処が悪いんだね?」
やっとの思いでお棺から引っ張りだされた番頭さん、もうすっかり泣き顔で‥‥
最初のコメントを投稿しよう!