落語『しんぴん』

『しんぴん』

え～‥‥まいど、下らないところで一席お付き合いを頂こうかと‥‥

まぁ、何でございますな。
人間てぇヤツは、誰でも1度は『死ぬ』もんでございまして。

ええ、ええ。そりゃぁもう皆さん『1度は経験』いたしますな。‥‥大抵は1度きりでございますが。
逆に『2度』死ぬってぇ器用なヤツ、これはあまり見かけませんで。

アタシの知る限りってぇと、ジェームス・ボンドってぇ英国のスパイが『2度死んだ』なんて話を聞いたりしますがね。
え？ご存じない？　どうもスイマセン、昔の話で‥‥

ま、それはともかく。人が死んだ、往生したとなりますれば、お葬式てっえものを致します。

この、葬儀・葬式ってなぁ『不幸だ』ってんで昔から『縁起』を気にしますな。
亡くなられたホトケさんを北枕で寝かせたり、ご飯に箸を突き立てみたりと、兎に角『普段はしないことをする』ってのが、えー‥‥定番でございます。

「番頭さん、番頭さんってば！」

「おや？　こりゃ若旦那。何か御用で？」

「『御用で？』じゃありませんよ？何ですか、さっきの電話の応対は！」

「電話？ああ、アレは出入りの花屋から『注文ありませんか？』って電話なんで」