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佳奈がようやくタエチャンのシュートを阻止できたのは、第三ピリオドに入ってからだった。第二ピリオド同様、早めにパスを出して、タエチャンが受けに回る。遥はしつこく喰らいつくが、スリーポイントラインの内側辺りで、高いパスがタエチャンに通るのを止めることはできない。腰を低くして、タエチャンの変化に耐える。ぎりぎりまで喰らいついて、タエチャンが最後の勝負を仕掛ける寸前に、佳奈が出てくる気配を全身で感じて、マークを譲る。
遥を交わしてシュートチャンスを得たと思ったところに、丈の高い佳奈が立ちはだかる。タエチャンは咄嗟に普通のレイアップシュートからふわりと浮かせるフローターシュートに切り替えたが、さすがのタエチャンも、咄嗟過ぎてイメージの切り替えがうまくいかなかったようだ。ボールはリングを捉えられず、バックボードに当たって、手前に落ちる。下では一旦地に足をつけた佳奈が再び飛び上がって、外れたボールをがっちりと捉えた。
歓声がコート内外に湧き起こった。さくらがいち早く攻めに転じて、ボールを呼ぶ。タエチャンがすかさず強いプレッシャーをかけて、佳奈からさくらへの直接のパスは封じるが、遥が横に飛び込んでいって、佳奈からのパスを受ける。斜めに駆けあがるゆっちんにパスをつないで、自分も走る。ゆっちんのドリブルは残念ながら少しスピードが足りない。けれど技術は十分にあって、追いすがり、前に出た十一番をレッグスルーでするりとかわして、インに切れ込む遥にボールを戻した。
遥はジャンプしてゆっちんからのボールをつかむと、宙に浮いたままの状態で、左手で前方のさくらに向けて思い切り放る。六番はまださくらに追いついていない。ボールは左サイドに駆けこんださくらの左手に空中で収まり、右手に挟まれ、一度だけ床に突かれて、再び宙に舞った。
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