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鮮やかなカウンターで、和達中が初めて得点で高畠中を上回った。応援席の歓声も最高潮に達して、選手たちも喜びに疲れを忘れる。これをきっかけに、タエチャンは更にプレースタイルを変えた。シュートエリアで、タエチャンがパスをする機会が多くなった。この変化に、遥たちも初めはついていけずに、あっさりとほかの選手にシュートを許すパターンが増えたが、その流れを踏まえてしまえば、あとは基本どおりしっかりと、ほかの選手のマークを徹底すればよいだけだった。タエチャン以外の選手の技術力も高いけれど、少なくともタエチャンほどではなかった。タエチャンがポイントガード的な役割に専念すると、少しだけ、遥たちの地力が上回った。そのまま、第三ピリオドは五点まで点差を広げて、和達中が高畠中を上回ったままで終了した。
けれど、そこからが勝負だった。
第三ピリオド、タエチャンはパス回しと遥のマークに専念して、余力をじっと蓄えている様子だった。ほかの選手を、高畠中は次々と交代させて、スタミナを温存させている風もあった。人数の少ない悲哀で、和達中は交代者がいない。ちゃらとおまけはバスケ初心者で、まだとても東北大会のレベルについてこられる段階にない。交代ができるとしたらクラブ出身ののぶ子だけだが、交代の対象は和達中でも一番消耗度の少ない佳奈になる。その佳奈も、得点力を考えれば、このシーソーゲームの中で、まだ能力的に劣るのぶ子と交代する程の余力は和達中にはなかった。
案の定、最終ピリオドになると、高畠中はスタメンを全員戻して、勝負に来た。タエチャンが主となる構成は第一ピリオドと同じだが、要所で、タエチャンはほかの選手にパスを回し、回したと思うとパスを受けて、それまでで一番的が絞りづらかった。
タエチャンはこの試合で一皮むけたのかも、と遥は思った。一方で、それをさせたのは自分かも知れない、とも思ったりした。
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