第2章 第一試合

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 残り四十秒のところで、佳奈のシュートが、枠から外れた。いつの間にかタエチャンがゴール際に詰めていて、リバウンド勝負に出て、佳奈からボールを奪った。十一番にボールが渡った。十一番は十番にパスを回し、十番はすぐに五番にパスを回した。早いパス回しと速攻に、和達中は十分についていけなかった。最後にタエチャンにボールが渡ったとき、遥はかろうじてタエチャンについていたけど、伸ばした左手の指の先を行くボールに触れることはできなかった。シュートエリアで、佳奈はついてこれていなかった。遥のブロックなどものともせず、タエチャンが伸びあがって、シュートを決めた。弾むボールを拾いながら、ゲームクロックを見た。残り十秒で、三点差がついていた。さくらが目の前にいなかった。さくらを探して、ハーフラインのもっと先に向かってボールを投げた。  六番はさくらについていけてなかった。いつもはエンドラインの近くで遥のパスを受けるさくらが真っ先に上がることなど想像していなかったのだろう。代わりに、タエチャンがさくらのことを追っていた。タエチャンの手のはるか上を通って、ボールはさくらに伝わった。両手で受けて、さくらは一瞬、両足ストップで進行を止めた。  さくらの右手を佳奈とゆっちんが駆け、左側を少し遅れていちごが駆けた。五番は佳奈についているというよりは、ゆっちんの方をより警戒しているようなポジション取りをしていた。ゆっちんの横にはゆっちんをマークする十一番ががっちりとマークに付いている。時間はわずか。点差は三点。スリーポイントシュートを得意とするゆっちんを警戒するのは当然で、タエチャンもさくらに追いつくやそちら側にポジションを置いた。  さくらが止まったのは一瞬で、佳奈やゆっちんが駆け抜けるか抜けないかのうちに、次の行動を選択していた。さくらはタエチャンが体を置いた逆を突いてドリブルを始め、慌てて追ったタエチャンをすかしてまた急に止まり、その場からシュートを放った。
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