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「遥をクラブに連れて行ったのはお母さんだよ。小学校に上がるタイミングでこっちに引っ越してきて、なかなか周りと打ち解けられない遥のことを心配して、お母さんが遥を連れて幾つかの同好会やらクラブやらを連れて回ったんだ。たまたま、その中で遥が選んだのが、お父さんが昔やっていたバスケットボールだったというわけさ。覚えてないか?」
遥は覚えていなかった。思いだせるのはバスケットボールを突くことに夢中になっている自分と、孤独の背景。
「だから、遥とバスケットボールを結びつけた恩人はお母さんだ。お母さんが退院してきたらお礼を言うといい。お母さんも、きっと喜ぶ」
それから、お父さんはにやりと笑った。
「もっとも、そこにお父さんのDNAが絡んでいたことは間違いないけどね。遥がクラブに入ることを決めた時、それまでどこに何をしにつれて行ってもはっきりとした反応を示さなかった遥が夢中になって大きなボールと取っ組みあって、帰り際、『遥もやりたい』と主張したらしい。『何だか妬けるわ』とかすみはぷりぷり怒ってたっけ」
遥には母親が怒る意味が分からなかった。娘が夢中になれるものを見つけたなら、それを喜ぶのが親というものではないか。
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