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いち早く間違い探しの答えを見つけたときみたいに、阿部さんは飛び起きて、嬉しそうに目を見開いた。
「酸性の女の子のときよりは、きっとそうだね」
僕は素直に認めた。
そんなつもりなどなかったのに、気がついたら僕は心を奪われてしまっていた。阿部さんは僕なんかよりよほど塩素系で、その強い刺激にアッサリやられてしまった。
すると、阿部さんは急に憂いを貼りつけたような寂しい笑顔を見せた。
「じゃあさ、梅原。わたしのこと忘れそうになった頃、またきてよ」
「……今度の週末じゃ、だめなの?」
寝室に入る前に言った阿部さんのセリフを思い出していた。
旦那から阿部さんを奪う気はない。面倒なことはごめんだ。
だけど、けして推奨されない関係に内緒でいそしむことならば、可能だと思っていた。
阿部さんはふわりと微笑んだ。
「だめ。あんまりスパンが短いと馴れたら困る。馴れると愛は腐るんだよ」
「……そうやって、旦那さんとの愛が腐ったってこと?」
たびたび阿部さんが口にした「愛」が指すものに、僕はそこでようやく気づいた。
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