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そうして、眉を八の字にして、泣きそうに笑った。
「すごく簡単。二度と会わないことだよ」
阿部さんは言った。
その提案は、確かに難しくなかった。だけど、予想もしていなかったことで、僕はかなり動揺した。
「い、言ってることがさっきと違うじゃないか。週末に会うくらいでちょうどいいんだろ? 忘れそうになった頃でもいいって言ったじゃないか」
裏を返せば、それは週末ごとに阿部さんに会いたいと、忘れそうになった頃でもいいから会いたいと、そう言っているのと同じだった。
阿部さんは困ったように微笑んだ。
「それでも、馴れるときって必ずくるんだよ。一生愛が薄れない究極の方法は、やっぱり会わないことなんだよ」
阿部さんの心の傷は、経験が少ない僕でも理解できる。
だけど、僕は阿部さんにまた会いたい。
踏み込んではいけない垣根の内側に引っ張り込んだのは、阿部さんじゃないか。
もしかしたら、僕との付き合いは例外かもしれない。試しもしないうちから、どうして元の場所に帰れなんて言うんだよ。
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