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「その酸性女子にフラれたあと、梅原はどうしたの?」
「それっすか」
突然話題を変えられたことに、僕は少々ガッカリを覚える。
「どうもなにも、熱はすっかり冷めたし、酸性だって言うんだから、中性の男子に推薦してあげたよ」
「何それ」
「バイセクシャルに『お前に気がある』って吹き込んでやった」
僕はさっき阿部さんがしたみたいに、ニタリと歯を見せた。
「その子は大学の四年間、その男子に付きまとわれるはめになったのだ」
阿部さんはうわっと噴き出して、お腹を抱えて笑い転げた。
「ひどい! ひどいよ梅原!」
「人をにべもなくフッたからだ。そう易々と幸せにしてなるものか」
「やっぱり塩素系だ!」
阿部さんの笑い声はきゃらきゃらと、目の前を通り過ぎていく、いくつもの立ち止まらない靴音にからみついて転がった。
「酸性女子なんて、放っておいたらまた僕みたいな被害者を生むだろ」
ひとしきり笑ったあと、阿部さんは目尻に滲んだ涙を拭いながら言った。
「でも、いいよ。梅原を傷つけたんだから、そのくらい当然だよ」
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