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「浮気したいってこと?」
声がうわずる。
「浮気じゃないって。梅原のこと、好きだもん。好きになった」
阿部さんは宣言通りコーヒーを淹れようと、キッチンへ消える。
「だ、旦那さんは?」
「出張。明後日まで帰ってこないよ」
そうは言ったって、その座椅子に腰を沈める気になんかなれない。
「何してんの。座りなよ」
戻ってきた阿部さんの手にあるマグカップは、二つとも装飾がない殺風景な白いもの。青とピンクだったらどうしようと思っていた僕は、ちょっとだけ安堵した。
とはいえ、どこからか主に見られているような居心地の悪さは拭えない。
「自由って言うより、む、無神経すぎない? 最初から思ってたけど」
突っ立ったままの僕が発したセリフに、阿部さんは特別意外そうな顔をしなかった。テーブルにマグカップを置いて、座椅子の上に正座する。
「まぁ、旦那がいるのに梅原を誘ったことは、そう言われてもしかたないけど」
「旦那と暮らす部屋で、他の男を好きだなんてよく言えるよ」
「じゃあさ」
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