ぬくもり

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あの子が生まれてから、私の眠るスペースがせまくなった。 専用の布団は用意してあるのに、いつも私の布団にもぐりこんでくる。私の体に小さな手を回して眠る姿は可愛いけど、たまには一人で広々と寝てみたい。 だけど、いつからか別々の布団で眠るようになり、外に出る時はいつも繋いでいた手を繋ぐこともなくなって、別々の部屋で眠るようになった。   あの子の成長が嬉しいはずなのに、ゆっくり眠れる日を楽しみに待っていたはずなのに、なのにどうしてかな。 ちっちゃくてあたたかいぬくもりを感じられなくなって寂しいと思ってしまう。決して大きいサイズではないけれど、この布団は私には広すぎるみたい。 それからまた時間が過ぎて、あの子は生まれ育ったこの家を出ていった。 一人の時間が欲しいと、自由な時間が欲しいとあれほど願ったはずだったのに、なのにどうしてかな。 あの子のいない時間を持て余してしまう。 やることはたくさんあるはずなのに、あの子のいない時間は私には長すぎるみたい。 さらに時間が過ぎて、あの子は生まれたばかりの小さな子を胸に抱いて家に帰ってきた。 あの子の小さな頃によく似た子を私も抱かせてもらうと、あまりの小ささに驚いてしまう。 気をつけて扱わないと壊れてしまいそうな、小さな小さなぬくもり。 久しぶり過ぎて忘れてしまっていたけれど、確かにこのぬくもりを以前も感じたことがあったことを思い出し、妙に感慨深い気持ちになった。 もうそんなに長い時間がたったんだね。   あの子が生まれたのがだいぶ昔のことのようにも感じるし、つい最近のことのようにも感じるよ。 この子みたいに何一つ出来なかったのに、ひとつずつ出来るようになっていて、そして今度はあの子が私の立場になったんだね。 もう一度私にこのぬくもりを抱かせてくれてありがとう。
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