絶望のアキト ー再誕ー

穴

「今日もいい天気ねえ！！」

洗濯カゴを片手に持ち晴天を見上げ、そう言ったのはアキトの母のハルコだった

「アキトの奴はどこ行ったんだ？」

居間であぐらをかきながら父のエンジが尋ねた

「朝早くからセイ君と出掛けたわよ。何か遠出するんですって」

「ほぉー。まああいつも家でゴロゴロするより幾らかマシなんじゃないか！出不精だからな」

「ほんとに、誰に似たのかねえ」

「…俺を睨むな」

「こんないい天気なのにテレビばっかり観てる人は睨まれて当然です」

「ニュースを観て社会情勢を知ることも大事なんだよ」

そう言いながらリモコンでニュース番組へとチャンネルを変える

《続いてのニュースです。青森県十和田湖付近で発見された謎の穴ですが、学者達の探査の結果微量の魔力残滓が検出されました。

この事から創界は原悪の徒ベルディアが絡んでいると見解を示すと同時にこの辺り一帯の警戒を強め、一般市民の立ち入りを禁止すると発表しました…

尚、現在も創界はベルディアの捜索を進めていますが依然として行方が分かっていません…ですので住民の皆様はあまりこの付近を出歩かないよう………》

「ほおー、ベルディアか…話には聞いてたが現実に存在するとはなぁ」

「物騒ねえ…まあ青森なんてここからかなり遠いし近付く心配はないわね…」

「だがどこでそいつらがウロついてるかわからんからな…アキトもあまり遅くなりそうなら電話して早く帰らせろよ」

「そうね。どこに潜んでるかわからないものね…」

「…下手すりゃ、まだ一荒れあるぞこりゃ」

「…こんなにも平和な日々を失うなんて…嫌よね」