原悪、来る

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原悪、来る

一瞬、稲光のようなものが辺りを包んだ 驚き眼を閉じた二人が次に眼を開いた時には、その光は失われていた 「なんだ今の」 「わからねえが、なんか…光ったな」 「…気持ち悪…なんだよ今の!」 「とにかく、ここから離れようぜ…なんか気味がわりいよ」 「おお…」 自分の掌を見つめながら、アキトは穴へと視線を移した 「早くしろよ!行くぞ!」 急かすセイに引っ張られ、アキトは穴から離れた 何でだろう… 何か、思わず手が伸びた… 奇妙な好奇心に駆られた自分に驚きを感じながらも僅かに高揚していた 人生で初めて味わうこの感覚 「そうか…これが…生きてる感覚ってやつか…」 曖昧だった、ボンヤリとした日々に 電撃が走ったかのように アキトの視界は鮮明に映し出されていた そしてーー その視界に突如何かが飛び込んできた ブォンッーー 「!?」 「子供…か。魔力を感じたのでやってきてみれば…」 ハットを深くまで被った細身の男が、二人の前に現れる 「セイ…」 「…ああ…」 二人は声を失った 男は、確かに空から降ってきたのだ 顔を見合わせる二人の中に同じ思考が生まれていた 「…まさかこいつが…」 「…やっぱりそうだよな…?」 こいつが……ベルディアか…ーーー! 「ふむ、二人共僅かながら魔力を持っているが…微弱なものだな。これなら、問題あるまい」 「…問題?」 「…うむ。問題ないな… 消しても」 ゾンッ!! 男の青黒い瞳から漏れる眼光に二人の身体中から脂汗が噴き出す 生存本能が、全力で逃走を促していた しかし裏腹に足は竦み全く動かない 「逃げないでくれよ。運動は苦手だ」 「…せ、セイ…」 「アキト……」 「とにかく…走るぞ!」 ザッ!! 恐怖を打ち払い二人は後方へと逃げ出した 「とにかく離れるぞ!!」 「どっかに隠れようぜ!」 「山側に逃げれば撒けるかも知れない!行くぞ!」
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