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私は普段、家の外で動画を見ることなんてまずありません。スマートフォンの通信量を気にしていたからです。しかしこのときは、そんなことを言っていられる状況ではなく、すぐにニュースの動画を開きました。
最初、天気予報かと思いました。日本の、衛星写真が、そこに映し出されていたからです。
しかしそれはすぐに、この災害?についてのニュースだとわかりました。
アナウンサーの焦り具合が半端じゃありませんでしたし、第一、その日本は、私たちの知っている日本とは、ちょっと違っていたのです。
静岡県が、なくなっているのです。
「あるはずの」静岡県の部分だけ、ジグソーパズルのピースが欠けているみたいに、綺麗にくり抜かれてしまっています。
そして目を凝らしてその衛星写真を眺めてみると……、なんと!日本の南を金魚が泳いでいるではありませんか!?
ええ、もちろん、その金魚はただの金魚ではありません。
私たち静岡県民が、毎日の天気予報で目にする金魚……そう、静岡県そのものでした。
私はもちろん状況をのみこめませんでしたが、急いで顔を上げて、先輩たちを見ました。
このありえない事実を、一刻も早く誰かと共有しなければ、この世界への不信感で死んでしまう。そんな気がしていました。
しかし先輩方は、スマートフォンを片手に、すでに死んでいました。というか、恐らく失神されていました。
その時、私はハッとしました。
私たちが今いるのは、富士山です。山梨県との県境がすぐそこにあるんだ、ということに、私は思い当たったのです。
私は恐怖と好奇心を抱えながら、山頂を目指しました。もちろん恐怖の方が大きかったと思います。ですが、私は動いていました。「恐怖」という名の好奇心だったのかもしれません。
山頂に着くと、やはり、思った通りです。そこには、3776m下の海が見渡せる、巨大な巨大な崖が出来ていました。
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