プロローグ

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 シンイチ:いや、引いたっていうか……お前女だよな?  シズク:そうだけど?  その『何を当たり前な事を?』といった反応に新一は大きなため息を吐く。  彼女が女性であるかどうかなんて、今まで確認したことはないが、名前と言葉づかいから女性であろうことは予想付いていた。  シンイチ:あのな、女が見知らぬ男と会いたいとかいうのはどうかと思うぞ、不用心すぎる。ただでさえダンジョンのせいで変な事を考える奴がいるんだから。  そう、ダンジョンが世界に巻き起こした騒動は、魔物だけではなかった。  世の中には、如何なるものを自分の利益に変えようとする愚か者はいくらでもいるのだ。  ダンジョンが現れて暫くすると、各地で行方不明者が相次いだのだ。  最初は、暴食にやられたのかと近隣住民は怯えていたそうだが、それらしい入り口や兆候が一切見受けられなかった。  不思議に思った国が調査すると、驚いたことに『暴食に見せかけた誘拐や殺人』だったと判明した。  各地に車で移動し、女性たちを誘拐し暴行、事が済めば別の土地へ移動する。  そんなことを繰り返していたそうだ。  遺体はすべて、山や海に捨てたとも供述した。  あまりにも下劣で、卑怯な手口に犯人は裸でダンジョンへ放り込まれるという、過去類を見ない刑罰が執行された。  その時の様子はテレビで公開され、犯人の男たちが泣き叫びながら奥へ連れていかれるというショッキングな映像が放送される。  ある意味見せしめだったのだろう。それ以降ダンジョンを悪用した事件が一気に激減した。  だが、こういった例は各国でもあるらしく、酷い場合だと証拠隠滅に未発見のダンジョンに遺体を遺棄するという奴らもいるとか。  そんな奴らがどこにいるかわからない、だから知らない人間と合おうとするのは危険だと、その事を懇々と注意してやると、シズクは素直に受け入れて謝罪した。  シズク:で、会ってくれるの?  その上での言葉に、思わず転びそうになる新一。  もしかして彼女は、バカなのではないかと言いたかったが、これ以上は掲示板で語る事ではないと、思い切ってメールアドレスを彼女に送った。  すると、すぐに彼女から返信が来た。
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